深海底鉱物資源
地球上の最後の未開拓地、
深海底に眠る豊富な鉱物資源
海洋には、エネルギー資源に加えて、有用金属元素(レアメタルやレアアースなど)を含む鉱物資源が広範に賦存することが確認されています。深海底鉱物資源は、成因、賦存状況、鉱物・化学組成、形状などによって「マンガン団塊」「コバルトリッチ・クラスト」「海底熱水鉱床」と分類され、開発に向けた調査と研究が重ねられてきました。
マンガン団塊(マンガンノジュール)
マンガン団塊は水深4000~6000mの平坦な海底に広く分布しており、直径2cmから15cm程度の球状または楕円状の形態を呈します。一般的に中心には核が存在しており、それらは海洋底玄武岩、石灰岩、稀にサメの歯などの大型化石です。主成分は鉄とマンガンであり、副成分としてニッケル、銅、コバルトなどの有用金属元素を含みます。特に、ハワイ南方のクラリオン・クリッパートン断裂帯周辺の公海域では、ニッケル、銅等の品位が高いマンガン団塊が賦存していることが知られています。マンガン団塊は金属元素だけではなく、生物起源粒子、大陸起源粒子、火山岩起源粒子、地球外起源粒子などさまざまな起源の物質を含んでいます。また、空隙率は10~30%、含水率は5~15w%、乾燥密度は1.2~1.5g/cm3を示します1)。
主要構成鉱物はブーゼライト、バーナダイトであり、化学組成を大きく規制しています。ニッケルと銅の含有量が2%を超えるようなマンガン団塊は、ブーゼライトに富むと考えられています。成長速度は百万年に数mm程度であり、これは遠洋性堆積物の堆積速度に比べて2~3桁程度遅い速度です。それにも関わらず、マンガン団塊は堆積物に埋まることなく、海底表層で成長し続けています。
コバルトリッチ・クラスト
コバルトリッチ・クラストは現在の全海洋において発見されており、水深500~6000mまで広く産出します。一般的に海山斜面の露岩域を厚さ数mmから10cm程度の鉄マンガン酸化物層が覆うように存在しており、酸化物層が厚いクラストは水深1000~3000mに分布しています。主成分は鉄とマンガンであり、副成分としてコバルト、ニッケル、テルル、白金、レアアースなどの有用金属元素を含みます。主要構成鉱物はバーナダイトであり、海水から直接元素が沈殿することで成長していると考えられています。成長速度はマンガン団塊と同様で百万年に数mm程度であり、数千万年間の海洋環境や気候変動を記録している可能性があると期待されています。
海底熱水鉱床
海底熱水鉱床は海底面から噴出する熱水から金属成分が沈殿してできた多金属硫化物鉱床です。海底熱水活動はプレートの境界部分に集中しており、我が国周辺では沖縄トラフや伊豆・小笠原海域、マリアナトラフにおいて活発な活動が確認されています。噴出口には金属が沈殿しチムニー(煙突)状になっていることが多く見られます。水深数百~3千数百メートルの火山活動が活発な海域で発見され、銅、鉛、亜鉛、金、銀等を含むほか、ゲルマニウム、ガリウム等のレアメタルを含むものもあります。
1) Hein, J.R., Koschinsky, A., Bau, M., Manheim, F.T., Kang, J.K., Roberts, L., 2000. Cobalt-rich ferromanganese crusts in the Pacific. Handbook of marine mineral deposits 239–279.